「お腹すいたよね、ごめんごめん。
さて、ママはハンバーグつくるからココとお利口に遊んでいてね‥‥」
買い物袋が食い込んでいた私の左腕は
紫色になっていて‥
いっとき自分の身体を休ませようか迷ったけれど・・・
1分でも早く
娘にいつもと同じ味のハンバーグを食べさせてあげたい気持ちが上回って、
慣れない弟のマンションのキッチンに立った私。
「ボールはどこかしら‥フライパン、油、塩、コショウ、ソース、、お皿はどこかしら」
モデルルームのように、フライパンや食器が同じ角度で並んでいて
傷つけないよう、汚さないようにと、
食器や調理器具をひとつづつ探しては気を遣いながら料理を始めました。
『いつもと同じ味のハンバーグを食べさせてあげたい!』
手間・苦労よりも‥、、娘の笑顔が見たい!
”ジューッ!!!!”
「わぁ!美味しそう!!(クンクン)いいにおい!」
キッチンのガス台より低い背丈の娘は一生懸命背伸びをして、
ハンバーグの様子を楽しみに見にきました。
「アチチだから、ママの後ろにつかまっていてね。
もう直ぐご飯だからね」
いままでの家ではないテーブルの、座る位置に少し戸惑う娘‥‥
久々の食卓。
料理を運んでいくと、ちょこんと正座して待つ娘。
「さぁ、食べようね。」
こんな状況でもひととき、
娘のちょっとした成長の姿を自分の瞳のシャッターに焼きつけて。
そう・・・
娘が食事を自分の手で食べる喜びを覚えた、フォークとスプーンを持参して来て本当に良かった・・・
「わーい!いただきまーす」
いつもと変わらぬ日常にしてあげたい想い。
旅行バッグの中に入れて来て振り分けるとき悩んだけれど
せめて使うものや、そばにあるもの、愛着のあるもの位は‥
省かないで本当に良かった‥
こんなことで、、、
この娘の感情が、取り乱されないでいて欲しいだけ。
穏やかな気持ちで、いて欲しいだけ。
「足りなかったらママのがあるからね。たくさん食べてね」
娘のお腹が満足するまで、自分用の食事には手をつけず、娘が満足してから、私は頂く。
その横で
ささみスティックをかじるココ。
本当にお利巧な犬・・・
私の気持ちがわかるかのよう。
ここ数日、バタバタしていて、きちんと食事を作ってあげていなかったね‥
「ママ〜、美味しいね」
ニコッとしながら何度も美味しいと言ってもらえるから、
ママは、頑張れる、、、
疲れてても、へっちゃら・・・。
あなたの笑顔がママの支え‥。
娘の食べている様子を見て、
また自分の涙腺から流れる感触を感じながら‥
娘に悟られないように
私の顔の裏側で涙が流れていくのを感じました。
「ごちそうさまでした!」
にっこり笑顔・・・
「はい、おそまつさまでした。」
この何気ないやりとりも、毎日繰り返すことで当たり前になっていく言葉。
娘の目に映る私は、やさしい顔をしているのだろうか・・・
疲れて、やつれてはいないだろうか・・・
私が食事中、ひとりでおもちゃで遊ぶ娘‥その横で遊ぶココ‥
静かな時間が流れ、私は自分と対話。
『ありがとうね‥‥もし話せるくらいの年齢だったら、色々聞きたいことがあるんだろうに、
まだ言葉を知らないから、、そうやって笑っていてくれるんだね」
ここは仮の宿。
落ち着いた時間を過ごしたいけれど、
今出来る、「普通の日常」を味わう事が
ささやかな幸せ。
『食事も出来たし、娘とココをお風呂に入れてあげよう』
弟も、ココと同じ種類の犬を飼っている為、犬に関するものは全て揃っていたのでとても助かりました。
「お風呂、気持ちいいね‥」
屋根がある、暖かい部屋がある、食事出来る、お風呂に入れる・・・
今まで当たり前だったことの一つ一つが、
とても有難く感じて・・・
当たり前の日常、
当たり前の事が普通に出来ることの喜び、
そしてそれは
とても儚く崩れ去ることを改めて思い知らされていました。
お風呂を出たらこれからの事、、、
弟に電話してみよう‥
プロフィールはこちら