駅からずいぶん歩いたと感じた頃、やっと裁判所が見えてきました。
家庭裁判所には初めて足を運ぶため少し緊張しながら、窓口で尋ねました。
「すみません・・・初めてなんですけれど、、
改名・・・名の変更についてお尋ねしたいのですが・・・」
『名の変更ですか・・・。ご本人様のでしょうか?』
「いえ、この子・・・、、私の娘の名前の変更です、、」
『わかりました、少々お待ちください。』
窓口の女性はメモをとると奥の職員に内容を伝えていました。
待合室のような場所の長椅子に娘を抱っこして腰かけ待つ間、ココはやっぱり外に繋いでおきました。
繋いでいるポールからココのリールがほどけないか心配で、度々外に確認しに出ていました。
数分後、窓口から呼ばれると娘を片手に抱っこし・・・
『こちらが名の変更の申請用紙です。書き方見本も一緒にどうぞ。』
不明点を質問し終えると、用紙をバッグに折れないようにしまいました。
『これを提出して、受理されれば・・・娘の名前を私がつけなおしてあげれるんだ!
一生使うこの子の名前だもの・・・』
窓口に頭を下げ出口の自動ドアを出ると、私たちを見て喜び跳ねるココ・・・。
「一つ目のアイテムを手に入れたよ。さあ、急いで次に行かないとね」
今度は今日私たちが泊まれる場所を探す目的に向かって・・・
左手に娘を抱き、右手にココのリールをくくりつけ急ぎ足で歩道を歩きました。
初めは何件かビジネスホテルを歩いてまわり・・・
『お客様・・・申し訳ありません・・・当ホテルでは・・・』
犬と2歳児を一緒に止めてくれるホテルは、
結局ありませんでした。
「あの・・・せめてこの周辺に、ペットホテルは無いでしょうか・・・」
親切なホテルのフロントの方にお願いして周辺のペットホテルを調べて頂き・・・
『あいにく・・・この周辺にはペット宿泊施設は該当がございませんね。』
「そうですか・・・お忙しいところ調べていただきありがとうございました。」
駅前近くのビジネスホテルを一通りまわるも、全滅・・・
「どこに行けばいいのだろう・・・」
役所が頭に浮かび、あの時もらったシェルターを思い出しました。
「市役所に行ってみよう!」
また目的地が変わり、道行く人に市役所の場所を尋ねて歩く・・・・・
娘を片手に、ココをもう片手に、、ひたすら歩くしかない・・・
靴擦れを起こした足は赤く腫れていました。
市役所に着くと、まず入り口のポールにココのリールを巻き付けて・・・
受付の女性に今の事情を話してみました。
『今、お調べしています。おかけになって少々お待ちください。』
しばらくすると、職員の人が
『こちらへおかけ下さい』
用意された席に座ると、
相談員の方との面談が始まり、私は堰を切ったように話し始めました。
「あの・・・」
私たちは今日泊まるところがないこと。
愛犬と2歳児がいること。
お金があまりないこと。
私たちが一緒に泊まれる宿泊施設を探していること。
帰る家が無いこと・・・
職員はカルテのような用紙にメモをとると、
『う・・・ん・・・少しお待ち下さいね・・・』
別の職員を連れて戻ってくるとその方は第一声こう言いました。
『あなた、、、
家に帰ればいいんんじゃない??』
「・・・・・・?!」
・・・私は、帰れない旨を話し、、、
『ちょっと奥で詳しくお話しを聞きますね、あのカーテンの部屋に入って待っていて下さいね』
母子専門の相談員に事情を説明することになりました。
「実は・・・夫が、強制わいせつで逮捕され、娘を連れて出てきました・・・
行く宛ても、帰る宛ても無いんです・・・愛犬も一緒で、泊まる所も無いんです」
私は今まで起きたことを必死に要約して話しました。
すると相談員は目をまあるくし、
『そんなドラマみたいな話、今まで聞いたことないですねえ。
・・・本当に本当ですか?
あなた・・・
・・・嘘ついてるんじゃないの?』