「‥‥だいじょうぶ?ママ‥」
娘はとめどなく流れる私の涙を、じっと黙って見ていました。
まんまるに目を見開いて、不思議そうな顔をして、、
冷静に涙腺を観察しているようにも見えました。
娘は、目から涙がこぼれてくるのを待ち構えては、お気に入りのジブリのハンカチで私の涙を拭ってくれていました。
愛犬は反対側の頬をつたう涙を、ペロペロと忙しく舐めては拭ってくれたのです、、
「‥‥あぁ‥」
私はその場にしゃがみ込み、丸くなると動けなくなってしまいました。
「ごめんね‥‥ありがとうね‥‥」
うずくまって膝に顔を着けて、声を殺して泣きました。
それでも繋いだ小さな手は絶対に離さずに、、
『これは現実なんだ‥‥』
ハッとして目を開けた瞬間、行き交う人、全てから自分達が偏見の眼差しで見られているような錯覚に陥りました。
自分も娘も、何も悪いことなどしていないのに、、もう二度と剥がれない悪しきレッテルを貼られてしまったような感覚になりました。
ネガティブな感情に全身を支配され、「私」を乗っ取られそうでした。
ポジティブなことなど何ひとつ考えられなくなり、、、
立ち上がることも出来ず、怖くて世の中を見ることが出来ないくらい怯えていました。
しかし私は離婚を決意し、あの悪しき家を出たのです。
まとまったお金も家具も何一つ持たずに、
不安だらけで何も約束されていない、不確実極まりない「シングルマザーの扉」を開けたのです。
私1人では無い!
可愛い娘と、愛犬と共に‥‥
『ゆっくりしてる暇は無い‥‥。次は何をすればいいんだろう‥‥。
とにかく動かなくては!』