「お父さん‥‥久しぶり。今、電話少し大丈夫?
実は私、、、」
父は私が26歳の時に母と離婚し、新しい家庭を持っていました。
実の子も出き、前の家族だっ私は、父の新しい家庭を壊さないように、自分の存在を前に出しませんでした。
私が連絡すれば、父は今の家族に後ろめたいのではないか、、
私が連絡したら新しい家族に迷惑ではないかと思っていたからです。
本当は連絡を取りたくても遠慮をして‥‥
そんな父は、私の
娘が産まれた時、産婦人科を自分で探して病室に駆けつけてくれました。
『教えていないのに、どうしてここがわかったの?』
と、正直驚き
手には父に不似合いな、可愛らしい薔薇の鉢植えを持って病室を訪ねてくれたのです。
「頑張ったな」
私を労うと、慣れた手つきで娘を抱き上げ
「女の子か」
目を細めて娘をあやしてくれました。
娘の誕生した日がまるで昨日のことのように鮮明なのに‥‥
それなのに私は今、父に
結婚した夫が強制わいせつで逮捕されたことを伝えなければならず、
そして離婚届の証人になって欲しいこと、
娘と愛犬を連れて行き先がないことなど
端的に伝えようと思っても、なかなか言葉が口から出てこない状況でした。
「わかった‥‥」
受話器ごしに、とてもがっかりした父の声。
娘の小さな手を握り、愛犬のリードを手首に巻き付け、ガラケーを手に、
私の涙は真っ直ぐ地面に吸い込まれていきました。
「証人は2名必要で、離婚届に記入漏れがあると受理されないの‥
だからお父さん、お願いできる‥?」
二度手間にならないよう、離婚届を一度で受理してもらうよう必死でした。
県外の弟と、父に証人を引き受けてもらう段取りが出来ました。