何も考えられなくなり、
気付けば湖に1人
入水していました。
11月半ばの湖はとても静かで、とても冷たかったのを覚えています。
寒くて、、
吐く息が白く、空気を吸い込む鼻がキンキン痛みました。
私の身体が腰ぐらいまで浸かった時、
背後から娘の声が聞こえてきました。
「わたしのじんせいはしんだーー!!じんせいはおわったーー!!」
娘の声にハッとして、私は浜辺の方を振り返りました。
「ママー!!ママー!!あぶないよー!さむいよー!お水冷たいからもどってきてー!!」
見ると波打ち際のすれすれのところで、娘と愛犬が叫んでいました。
私は湖の中で身体を後ろにひねったまま立ちすくみ、しゃくりかえし、涙が止まらなくなりました。
産まれてわずか2歳半の娘に
「私の人生は終わった」
などという言葉を叫ばれようやく正気に戻ったのです。
こんな言葉が2歳半の子供の口から出るものなのでしょうか‥‥。
「いったい いつ、そんな言葉を覚えたの?誰が口にしていたの?」
私はひねっていた身体を、湖の先の大きな月に向かってもどし、涙でぐしゃぐしゃになった顔で、
一度空を仰ぎ、鼻から大きく空気を吸い込んで腹にためると、
彼方に向かって思いっきり叫びました。
娘と愛犬に背を向けて、
湖の向こう岸に届くほどの大きな声で
腹の底から叫び、
泣き、
吠えつづけました。
しばらくして気持ちが落ち着いてくると、ようやく娘たちのところへ戻ることが出来る自分になっていました。
夫に対する怒り、恨み、憎しみのような憎悪が口から放たれたおかげで、張り詰めていた身体の力は抜けて穏やかさを取り戻していました。
凍りそうな湖から出て、娘と愛犬の元へ行くと、
娘はびしょ濡れの私に抱きつき、愛犬は立ち上がり尾を振って喜んでくれました。
「ママーっ!!」
「ごめんね!こんなところを見せてしまって!不安な思いをさせてしまって!
ママはここにいるよ!ごめんね‥‥」
星が瞬き、穏やかな波立つ湖、キラキラ輝く砂浜。
娘は走り出した愛犬を追いかけ、砂浜に小さな足跡をつけながら、声をあげて追いかけっこを始めました。
こんな状況でも、子供はネガティブな感情をポジティブに切り替える心のスイッチを持っているのです。
大人はいつまでも引きずり、ネガティブな感情が、憎悪や憎しみ、恨みに変わってしまうというのに‥‥。
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