看護師さんが分娩台の上で私をまたぎ、パンパンに張った私のお腹をぐーっと押しながら
大きめの声で叱咤激励しているのが見えました。
「ふっふっはー!ふっふっはー!!」
産道がなかなか広がらず、医療器具の金物の音が響くと
私は痛くて痛くて泣きながらいきんでいました。
「はいお母さん!力を入れて!もっといきんで!!
あなたが頑張らなかったらお腹の赤ちゃんが力尽きて死んでしまうんだよ!自分のためじゃなく、赤ちゃんのために頑張るの!!」
″お母さん″、、、お母さん、、
初めて自分が″母″という代名詞で呼ばれた瞬間でした。
私は今まで、どれだけの想いを巡らせてこのお腹の命に語りかけたことでしょう。
この子は一生懸命お腹の中から足で蹴って「命の存在」をアピールしてくれていました。
私が悲しくて泣けばお腹は収縮し、
私が嬉しくて喜べばお腹の中の命も喜んでいるかのようでした。
私が不安に苛まれればお腹の中の命も一緒に苦しみを味わい、
私が恐怖におののいていればお腹の命も一緒に身を震わせて忍び、
私の思っていること感じていること、
喜怒哀楽を
この世に誕生する前から、
私と共に共有してくれていたのです。
「痛い!!ふっふっはー!痛いよーー!ふっふっはー!!」
メリメリっと全身に自分の体内から音が響き、窮屈な産道をグルグル回転しながら、、
逆子で産まれてきた娘は、へその尾が自分の首に巻き付いてしまったためどす黒く変色していました。
喉には血のかたまりが詰まって泣き声をあげてくれません。
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