【その日は突然に1-8】
思い起こすと結婚してからというもの毎日、夜中まで夫の事務所で働いている自分がいました。
人件費を削減するために家族が駆り出され、
そんな中でも夫はお金がなくなると頻繁に私に自殺をほのめかしてくる毎日。
私がお金を用意出来ないことを伝えると
「じゃあ死ぬしかないよ‥」
そう捨て台詞を吐くまでのやりとりを、わざと義母に見せた上で、行き場所を告げず家を飛び出す夫。
まるで私に罪悪感を持たせて‥‥
また今夜も、、、
ひと気の無い危険な場所へ娘を抱えて‥
東北の深夜の気温は氷点下で
さらに水辺や森、ビルの屋上は風が吹きさらし
大人の私でも凍え手も足もかじかみ感覚を失うほどなのに‥‥
人が居るはずのない夜の川‥‥
橋の欄干にロープの掛かかりそうな場所をあちらこちら探し、
高いビルの屋上は非常階段を登り、立ち入り禁止の表示を目にしても無視して入って探さなければならない。
暗くとても寒く、危険な場所ばかり‥
しばらく探していると、私の着ているコートの胸の辺りにある娘の頬は氷のように冷たくなり、いくら私の手で温めようとしても冷たいまま‥‥
なぜ自分の娘を胸に抱き、こんな深夜にこの子の父親の死に場所になりそうな場所を探して歩かなければならないのか、、、
『暖かい部屋で、静かに寝かせてあげたいのに‥‥ごめんね‥‥でも家に置いてはこれないから、、許して‥‥』
腕の中にいる小さな娘が哀れでなりませんでした。
しかしこれらの夫の行動は、
全て私にお金を用意させるために仕組まれた演技。
お金を用意する段取りが決まると、まるで何事も無かったかのように普通に戻るのです。
初めから死ぬ気など無く計算されていたということ‥‥
そんな馬鹿馬鹿しい茶番劇に付き合わされても、
娘を「ひとり親」にしてはならないと必死に我慢をしていた私。
それでも疲れ果ててしまい私から別れを切り出すと
「別れるくらいなら死ぬ!!、」
とまた脅され‥‥
本当に死ぬのではないかと思わせるような行動を何度も見せられ‥‥
「会社の金が必要なんだ!」
「会社があるから売掛金が回収出来るんだ!」
「会社を存続させないと生活費も割り出せない」
夫に、そして夫の家族にも
繰り返しそう言われ続けていました。
ですがそれも全て彼の自作自演、
お金を引き出す為の演技でしかなかったのに‥‥